理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

平成17年11月
理事長 安井俊明
悔 し さ を 乗 り 越 え て
――幼児期に小さな失敗や挫折を経験したり
我慢する経験は 今後の育ちに必要であり重要なこと――

運動会が終わり、桃組の坂東朋美さんからお手紙を頂きました。
その内容は、最近の社会の風潮

  • 子供には苦しいこと、しんどいことをさせたくない

  • 子供には、つらい思いや悲しい思いをさせたくない

  • 子供が色々と試行錯誤(失敗したり上手くいったりという経験)する
    以前に、お母さんが先に手を出して綺麗に仕上げてしまう

  • 子育てとは、将来の独り立ちに向けて子供を鍛えることという視点が欠けている。

に対して警鐘を鳴らすとともに、非常に大切な内容を含んでいましたので、ここに改めて取り上げました。


 萌々花さん、とても貴重な経験をしましたね!!
安松幼稚園では、お楽しみ音楽会・運動会・生活発表会などの行事の練習や本番を通じて、力いっぱい物事に挑戦していく精神・強い心を育てたく思っています。
 そしてその練習過程においては、ちょっとした失敗をする事もある。また何事も上手に楽しめるようになるまでには、我慢しなければならないときもある。
こういう経験を、子供達に積ませたいのです。
 演技の上手さや綺麗さなどの結果は、よいにこしたことはありませんが、あまり重きを置いていません。
そして「集中して一生懸命頑張るという精神」「全力を出し切った後の喜びや感動」を子供達に経験させたいのです。
 この精神と感動(達成感)が、将来生きていく上でのたくましさと積極性を育てるとともに、今後の人生において一生の宝となることでしょう。


 それとともに、一生懸命全力でやった時でも、上手くいかない時があります。
私は、「子供たちの成長と将来の自立を願うとき、時には適度な緊張を経験することは、とても大事だと考えます。そして幼少期に、小さな失敗や挫折を経験したり、我慢する経験をもつ事は、今後の育ちに必要であり重要なこと」と考えています。
 小さな挫折や失敗の経験をもたない子供 また我慢することを教えられていない子供は、ある時 誰かにちょっと否定されるようなことを言われると、自分の全人格を否定されたように思ってしまう。その結果、ナイフなどでの過剰な敵対反応や もしくは 登校拒否や引きこもり へと突っ走ってしまう。昨今の日本の社会において青少年に関する色々な問題が報じられ、見た目には異なる二つの現象ですが、幼少期におけるこれらの経験(注意されたり叱られた経験・小さな失敗や挫折の経験)不足が、大きな原因の一つになっているようです。
 言い方を変えるなら、子供が人間としてたくましく育つには、適度なプレッシャーがむしろ必要で、それらを乗り越えていく経験が、幼児期にこそ必要なのです。(参照:安松幼稚園“早わかり”の3.教育とは子供の周りからプレッシャーやストレスを取り除く事ではなく、それらを乗り越えていく力やたくましさを育むこと)
 萌々花さん、見事に悔しさに耐え、プレッシャーやストレスを乗り越えました。跳び箱の5段、6段を跳ぶに、遥かに優る経験をしました。
フレーフレー!! 萌々花!! フレーフレー!! 萌々花さん!!
応援していますよ!!


参考までに
●京都大学の霊長類研究所助教授の正岡信雄先生
昨今の親は子に対し、「いやな思い」や「つらい思い」をさせたくないという傾向が、とても強い。無論、その心情はよく分かる。
しかし人間は人生において、いつか「いやな思い」や「つらい思い」を必ず味わうのである。それを乗り越えないと、一人前にはなれない。
そのための準備をすることも、また、養育者の役目であることを失念してはならないだろう。


●東京大学医学部卒・上智大学名誉教授 福島章先生
(精神医学者、犯罪心理学、
精神鑑定)


人間は、脳が完成されずに誕生します。そして誕生後3・4・5年で、ほぼ完成されます。(DNAによる遺伝的な要素が、脳のすべてを決定するわけではありません。)
その3,4年のうちに、どういう情報・どういう環境を与えるかで、それぞれ異なる脳が出来上がります。環境的なもので、脳そのものの出来上がり方が変わってくるのです。例えば、シューベルトを聞かされて育った子・ハードロックを聞かされて育った子・親から話しかけられずにテレビで育った子は、それぞれ異なる脳に育つということです。
 先生は、生物学的な立場から、人間の育ちのあり様から、昨今の犯罪について様々に分析されています。

  • 例1:

    幼少期に、親の愛情に満たされたか

  • 例2:

    幼少期に、よい先生に出会ったか

  • 例3:

    幼少期に、きちっとしたしつけを受け、我慢する事などを学んでいるか

  • 例4:

    人間関係を学ぶ環境や、地域など周りとの関わり方は十分だったか

  • 例5:

    幼少期に虐待を受けたか

  • 例6:

    何らかのトラウマがあるか

  • 例7:

    その他

 

 それらは、私たちの子育てにも非常に参考になることが多くとても興味深いものですが、また別の機会に紹介したく思います。