理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

平成24年8月1日
理事長 安井俊明
安 松 幼 稚 園 の 子 供 た ち

【Ⅰ】6月末のお楽しみ音楽会では、参観者の全員の目が、歌っている子供達・指揮する先生に集中し、楽しく充実した貴重な時間を過ごすことが出来ました。振り返ってみますと、私達の日常生活において、何百人もの人間の気持ちが一つになって、舞台の一点に集中するという様な出来事は滅多にあるものではありません。そういう時間をもてたことに、感謝したいと思います。

   
お楽しみ音楽会 - 歌っている子供達
   

【Ⅱ-①】 来賓でお越しの、そしてご自身が声楽家の田尻町長・原明美さんが、「子供達はやらされているのではなく、自分から楽しんでやっている。すごいことですね。特に5歳児の歌唱は、どこへもっていっても恥ずかしくない。なぜなら5歳の子供が、大人の私達を感動させてくれるのだから。」と激賞され、続けて、安松幼稚園の芸術(音楽や美術)に対する理解の深さと子供達への実践を高く評価下さいました。
というのも、約20年前のお子さんの在園を通して、安松幼稚園を昔からご存知なのです。
 
 【Ⅱ-②】私の友人である元大阪教育大学附属天王寺校舎・音楽科の諸石先生は、音楽指導において、表情・表現(動作)を大切にされています。

   
子供に対しての音楽指導
   

参観後の高評の中で、子供への指導に触れられ、「うまくやって見せ、真剣に本気でさせてみて、上手に出来た後はとことん褒めることの大切さ」を述べられました。これはまさに、安松幼稚園が日々実践している姿です。そして「うまくさせる」の中には、子供を注意すること・時には厳しく叱ることが当然含まれる。
昔の人は、「させる」の中に先生の指導・注意・叱りが含まれるのは当たり前の事だったから特に言葉に出さなかっただけのことである。が、最近の、子供の心を傷つけてはいけないの風潮の下、先生の明確な指導もなく、子供の努力もなく、そして上手に出来ていないうちから安易に褒めるという、子供の機嫌を取りながらの教育、いわゆる子供・児童中心主義に対して疑問を呈されました。(HP理事長エッセイも参照下さい)

【Ⅱ-※】 そこで本稿は、
どのようにすれば、原町長さんが仰るように「子供達はやらされているのではなく、自分から楽しんでやるようになるのか?」 そしてそれは、
諸石先生のおっしゃる「うまくやって見せ、うまくさせてみて、上手に出来た後はとことん褒める」にその鍵があるのだということを、お母さんからのお便りから紐解いてみたいと思います。

お楽しみ音楽会後に授業参観
 

お楽しみ音楽会(6/26)後に授業参観(6/29)がありました。参観後ホールで、お楽しみ音楽会の練習中の先生達の悩み・葛藤について話しました。
これらの経緯を頭に入れて、次の稿をお読み下さい。

 

【Ⅲ】 お母さんからのお便り
●年長梅組・林さん(音楽会前日)
明日は音楽会ですね。私も怜奈も本当に楽しみです。
毎日園の帰り道や家の中でもずっとずっと大きな声で唄い、振りの練習をしていました。
熱心で楽しそうな姿でした。一番驚いたのは、夜寝ている時に、突然歌い出したことです。よほど歌うことが大好きな様です(笑)
私にとっても最後の音楽会になりますので、しっかりと目に耳に集中して楽しみたいと思っています。
(音楽会後日)
先日の音楽会、とても感動しました。
家では元気いっぱい楽しく歌っていた怜奈ですが、本番当日は緊張でガチガチの表情で……。見ていて少し心配にもなりましたが、梅組の歌が始まると、歌っているうちに手の振りをしていくうちに、どんどん緊張した表情が緩み、時折笑顔も見えて、また真剣な表情になって、音楽会に臨んでいました。
最後は満面の笑みで退場する怜奈を見て、安心と達成感でいっぱいだったと思います。
練習していた時の目的に向かって頑張る姿は中々見れるものではないし、本当に楽しそうでした。
歌は心が元気でないと歌えないと思います。歌っている怜奈を見ていると元気をもらえました。園児の声が一つになってホールの中全体に響くと鳥肌が立ちました。どの子もみんなキラキラとしていました。可能性をたくさん持った子供達の歌は、本当に心に染みました。
先生方の努力が全て子供達のパワーに繋がったと思います。幸せな時間をありがとうございました。


●年長梅組・岩田さん 
授業参観後のホールでの松浪先生のお話、聞かせて頂きながら私も涙が出ました。音楽会の当日を迎えるまで色々なことがあったのだろうと想像は出来ますが、先生方も諸石先生との間で厳しいやりとりがあったとのこと……。練習途中で気持ちが沈み込んでしまった梅組さんに、論語を使ってやる気を引き出して下さったというエピソードは、ホールで安井先生が話して下さった「如何にして子供のやる気を引き出すのか」というお話を、松浪先生が実践されている姿なんだと思いました。
音楽会の前日、私が晃季に「明日はいよいよ音楽会やねぇ。」と話すと、晃季は「先生、めっちゃ本気やで。だから僕らも本気で唄うねん。」と言いました。うわぁ、なんかいい関係やなぁと思いました。
子供に何かさせる時に、大人が頭ごなしに上から命令してもちっとも上手くいきません。(分かっていても家ではついつい言ってしまいますが )でも仮にしんどい事でも頑張ろうって思える気持ちを引き出せるのは、何より先生自身が体を張って一生懸命に精一杯して下さるから、その姿を子供達も見ならうのかなと思いました。
年長さんの歌に涙があふれました。自分の子供がもう年長になってあんなに立派に歌えるようになったんだという想いと共に、自分の子供のクラスでなくても涙が出るのは、子供達の精一杯歌う姿に胸を打たれたからなのでしょう。
人を感動させる事ができる程、そこまで指導するのは並大抵ではないと思います。よくぞここまで教えて下さったと思うと、音楽会の後、お迎えの時に松浪先生の顔を見た時に、また涙が出ました。
私は安松幼稚園で、どれほど感動の涙を流してきたのか、年長最後の年、行事ごとにまた泣いてしまいそうです。


●年長桜組・山下さん
親子で待ちに待った音楽会の朝、39度の熱が出てしまい着替えるのもやっとのグッタリした茉央に「今まで頑張ったけど音楽会はお休みしようか」と言ったら、涙ポロポロ流しながら「絶対行きたい、先生とみんなと歌いたい」の言葉に胸打たれ、ギリギリまで考え幼稚園に連れて行ったこと、本当にお手数お掛けしました。
病院から幼稚園に向かう車中で少しずつ顔つきが変わり、“君をのせて”を聞きながら練習して「もう茉央は全部歌えるからバッチリやねん」ってドヤ顔で言っていた通り、桜組のうまさにビックリ!!あんなにグッタリしていたのに、どこかにスイッチでもあるのかと思うくらいの気合いと、楽しく歌っている姿に私の涙腺は壊れてしまいました
大人でも熱が出ただけで「疲れた~しんどい~」っとなるところを、「歌いたい! 頑張るぞ!!」の姿勢は、家ではなかなか引き出せないと思います。
安松幼稚園だからこそ先生方のおかげで普段見ることのない茉央を見る事が出来ました。茉央の気持ちを優先して本当に良かったです。
短期間でここまで上手にみんなまとまって心こめて歌えるのは、先生方の努力の成果だと思います。本当に楽しい時間ありがとうございました。


●年長桜組・山門さん
昨日は素晴らしい音楽会でとても感動しました。3年前宗一郎が芽生えの時、初めて年長さんの歌を聴いた時から、この子が年長になればこんなに歌えるようになるんだと、この日をずっと楽しみにしてきました。桜組は「君をのせて」を歌うと聞いた時、私のとても大好きな歌だったので、それだけで涙が出て……少し略……それ以来、CDをみんなで聴いたり食事の時やお風呂で大合唱したりと毎日歌三昧でした。……少し略……迎えに行った時の満足そうな表情を見て、やりとげたんだナーと嬉しく思いました。
他の年長のどのクラスも素晴らしく迫力があり涙しました。年少の川口先生のドレミの歌は、年少の可愛らしさよりも、本当の映画「サウンド.オブ.ミュージック」を見ているようで、トリハダがたちました。

年少の川口先生のドレミの歌に感動

昨日は本当に楽しくて嬉しくて素晴らしく感動した良い一日を過ごせました。本当にありがとうございました。


●年長桜組・高橋さん
……少し略……
顔がぐちゃぐちゃになるくらい感動しました。
先生が真剣だから子供達も真剣!
先生が元気いっぱいだから子供達も元気いっぱい!
先生が笑顔だから子供達もニコニコ笑顔!

親と子の関係もそうですよね、改めて気付かされました。

●年長梅組・川野さん
……少し略……
年長になって二ヶ月あまりで、ここまで梅組を一つにするには本当に大変だったと思います。歌い終わった梅組の笑顔は本当に素敵で。松浪先生の汗と涙の結晶だと感じました。まさに日本一の年長さんです。

●年中ばら組・塩谷さん
年中になってあまり元気がなく、少し心配していました。それが音楽会の練習が始まった頃からみるみる元気になり勢いがつき、毎日その日に習った歌や、振り、強弱のポイントや表現の仕方などを、自分が先生になりきって私によくレッスンしてくれるようになりました。音楽会の日まで歌を聞かない日は一日もありませんでした。
参観後の安井先生の話に「寝ながら歌う人があったようです」との話がありましたが、さくらも寝ながら、しかも勢いよく歌い出し、主人と二人で大笑いすることもありました。……少し略……先生の本気が全ての子供に伝わり、その子供達の歌・表情・一生懸命さが一体となって私に届きました。
このように子供の成長を目の当たりにした時、先生方に感謝せずにはいられません。本当にありがとうございます。


●年中きく組・髙幣さん
授業参観での音楽発表、一生懸命な姿に感動し、成長した姿を見てとても嬉しく思います。また先生と園児が同じ気持ちでいる姿に、とても感動しました。日常生活でも園生活により身に付いていることが沢山あります。挨拶もそうですが、弟が出来なかったことが出来るようになった時、自分のことのように「すごーい!!できたできたぁ!!」と、笑顔で大きい声で手をたたいて喜んでやります。それを見て弟も嬉しそうに一緒に手をたたいて喜び、それにつられたのかお姉ちゃんも一緒に喜び家族全員で喜びました。これなど日常の先生のご指導そのものだと思い、とても感謝しています。

【Ⅳ】最後に
ほんの一部の方のお手紙しか紹介できませんでしたが、子供達のやる気・積極性をお母さんのお手紙から、少しはお伝えできたかなぁと思います。原町長さんが仰ったように、まさに「やらされているのではなく、自分から楽しんでやる」という境地に、安松幼稚園の子供達は至っているようです。
またそういう子供に育つのも、諸石先生の仰ったことを安松幼稚園の先生方が実践されているからだと思います。多くのお手紙は、先生の愛情からくる元気・熱心・真剣さが子供の心を捉え、子供に乗り移っていると感激をこめて記されています。時には厳しく注意し叱ることもありますが、口先ではなく、心から発する言葉です。これが子供の心に届いているのです。そして困難・障害を乗り越えた際には、先生は心から喜び、その喜びが体からほとばしり出て、お友達の心に伝わっていく。まさに物事を成し遂げた際の喜び・達成感を先生と子供が共有しているのです。先生・お友達の心が一つになって何かを成し遂げるという経験に対する心の震え・躍動が、当日の朝39度の熱が出ても、「絶対行きたい、先生とみんなと歌いたい」の言葉に表れるのでしょう。
私も原稿を書いていて涙があふれてきました。
年少の多くのお母さんからも「この2~3ヶ月で驚くほどの変化があり、心も体も大きく成長しています。園児のはち切れんばかりの笑顔や真剣な表情、自然に挨拶ができたり、困っているお友達を助けてあげたり……素敵だなと思います。(年少きりん組・清水さん)」という趣旨のお手紙を頂いています。安松幼稚園のあらゆる場所に、お楽しみ音楽会における園児と先生の触れ合いと同一の園風が流れているのでしょう。
厚い先生、その真剣さに応える子供達、そして音楽会において真剣に鑑賞して下さる保護者の方々。これら3点がそろって音楽会が完成したといえるという諸石先生の言葉を、今味わっています。
お楽しみ音楽会に関わって下さった全ての方に、心から感謝申し上げます。