理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

平成18年3月
主任 山登めぐみ
すべては子どもの話をゆっくりと聞くことから始まる

 先日、こんな事がありました。
年少のお友達が一人走ってきて、「先生あのな、わたしな、何もしてないのにな…」と、話します。でも、一番重要な「…」は聞こえません。
最後の…をはっきり話すように言うと、また「先生あのな」から始まり、「…」の部分では聞こえなくなるのです。3回ほど繰り返し「…」は、「○○ちゃんが押してきた」という事がわかりました。
 「○○ちゃんを呼んでお話を聞くわね。」
同じ年少の○○さんを呼び、「押されたと話しているけど、どうなの?」と聞くと、○○さんは首を横に振るだけです。
 二人の遊んでいた場所に直接行き、それぞれの言い分を聞きました。
○○さんは、押すつもりはなかったけれど、ぶつかってしまった。何も言わずに走って行ったので、お友達は押されたと思った、という事でした。
「押すつもりはなくても、ぶつかったらその時に、“ぶつかってごめんね”とお話しましょう。そしたら相手のお友達も“押された”とは思わないからね。」
 「ぶつかってごめんね」
 「いいよ」
二人が接触して約15分後、やっとこの会話を交わせる事ができました。
 このような指導は、毎日何件かあります。この年少のお友達も、いつかは先生が真ん中に入らなくても、自分から伝え、会話が出来ていくことでしょう。
 「他園よりも物の取り合い等のケンカが少ない」と、実習の学生は感想を話します。また、園見学で来園したある保護者の方は、「子ども達元気ですね。それだけでなく、子供同士で話しながら遊んでいる姿を見ると、自分でけじめをつけているので、安心して見ていられます。」と話されました。
 子どもは遊びながらいろいろな事を学んでいきます。特に3歳児は、相手に気持ちを伝える「言葉」においては、先生の助けが大きな役割を担っています。この毎日の積み重ねの教育が、安松幼稚園では、ケンカの少ない、会話の出来る園児が育っていく事に繋がっているのだと思います。


(安松幼稚園新聞第50号より)



理事長注:
 当園の先生は、どんな場合でも両者の言い分をしっかりと聞いて対応してくれます。子ども達は、それに馴染んで卒園していきます。

以下 笑い話
 ある小学校で、児童2人の間でトラブルがあり、1人が泣いていました。先生が一方的に、泣かせたと思われる子どもを叱っているのを見た当園の卒園生が、「先生、二人の言い分をよく聞いてやらんと、どっちが悪いかわかれへんで」と、先生に意見したそうです。こういう話を、現場にたまたま居合わせたお母さんから「本当に感心しましたわ」と数回聞いたことがあります。