理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

平成23年3月22日
理事長 安井俊明
多くの義援金協力につき感謝・感謝
――― 日本人の誇りの源 ―――

 3月11日(金)に起こった東日本大震災の状況に、現在も胸が塞がれる思いであります。
被災された方々の秩序だった誇りある行動、自分の身の危険を顧みず身を粉にして救助活動に邁進される人々のお姿を通して、私は被災地の方々から、逆に勇気と感動を頂きました。
亡くなった方々にお悔やみを、被災地の皆様に心からのお見舞いを申し上げると共に、一日も一刻も早い復興を念じております。
私達に何か出来る事はないかという気持ちから、14日(月)に義援金の呼びかけ(理事長エッセイ参照:H23.3.14 頑張れ日本 頑張れ東北)をしたところ、「私も何かをしたいと思っていたところに幼稚園からの呼び掛けがあり、本当に嬉しいです」との賛同のお手紙(お母さんからのお便り参照:H23.3.15 東日本大震災に当たって)を数多く頂きました。
安松幼稚園としても感謝の心でいっぱいです。

園児・保護者の皆さんから

562,287 円

安松幼稚園の先生方から

320,822 円

883,109 円

の浄財が集まりました。



早速大阪府私立幼稚園連盟を通して、被災地の幼稚園関係者もしくは被災された方々に届く手筈になっております。
皆さんに、感謝・感謝です。



東日本大震災 義援金


さて現在、私は上にも記しましたが、あの大混乱の中で、被災された方々の秩序だった誇りある行動はどこから生まれるのかをとても知りたく思っています。あの大混乱の中、略奪は報道されていません。(注:ちょっとした盗難や振り込み詐欺が発生しているようですが、それは大震災以前にも起こっている日常の範囲内のレベルです)
次の項も、続けてお読み頂ければとても嬉しいです。



日 本 人 の 誇 り の 源


東日本大震災の惨状の報道を見るにつけ、逆に被災された方々から私が励まされているような気持ちになりました。
列を作り整然と順番を待つ人々、身重の方や体の弱い方を労る姿、自衛隊・警察・消防・海上保安庁の方々の我が身を犠牲にして復旧に携わっている姿を見て、私は日本の国柄・日本人の優しさ・資質の高さを思い出すことが出来ました。
この混乱の中で略奪・放火などがほとんど起きず、泣きわめき不平不満を口いっぱいにしゃべる人の姿もほとんど見当たりません。
他国がまねの出来ない日本の国柄、日本人の誇りはどこから生れたかを私は知りたく思います。この分析は、この国柄を次の世代に伝えていくためにも、今後の日本にとって、放射能処理の問題と同程度に重要だと考えます。
私は、日本が春夏秋冬の季節の移り変わりのある潤いある地域に位置していること。次に、仏教のベースにある「この世の中のすべてのものは、ただ一時も留まらず移り変わっていく」という、平生は意識していないけれど、常無きという無常観を、日本人は肌身感覚で身につけているからこそ、非常な悲しみの中でもその事実を受け止め、冷静に事態に対処できているのだと感じます。宗教に節操がないといわれる日本人が、非常に大きなところで最も宗教的であり得たのでありましょう。
第26回正論大賞を受賞された櫻井よしこ氏の講演が「勇気を持って国難を乗り越えよ」をテーマに3月末にありました。講演の最後に、世界に誇り得る日本人の人となりを失わないためにも、日本人は宗教に対して敬虔な態度を持ち、お寺・神社を大切にした復旧作業が望まれると話を締めくくられましたこと、その慧眼に敬意を表します。
ただ翌日の産経新聞の記事には、根源にあたるこの部分が掲載されなかったことが残念でもありました。





最後に、ポーランドが生んだ世界的映画監督、アンジェイ・ワイダさんの励ましの言葉「自然を受け入れてきた民よ」をお贈りします。彼は日本をこよなく愛し、日本美術の強い影響を受けたと自ら認められている方です。(4月8日の産経新聞から一部抜粋)



自然を受け入れてきた民よ


日本の友人たちへ
このたびの苦難の時に当たって、心の底からご同情申し上げます。深く悲しみをともにすると同時に、称賛の思いも強くしています。恐るべき大災害に皆さんが立ち向かう姿をみると、常に日本人に対して抱き続けてきた尊敬の念を新たにします。その姿は、世界中が見習うべき模範です。
ポーランドのテレビに映し出される大地震と津波の恐るべき映像。美しい国に途方もない災いが降りかかっています。
それを見て、問わずにはいられません。「大自然が与えるこのような残酷非道に対し、人はどう応えたらいいのか」
私はこう答えるのみです。「こうした経験を積み重ねて、日本人は強くなった。理解を超えた自然の力は、民族の運命であり、民族の生活の一部だという事実を、何世紀にもわたり日本人は受け入れてきた。今度のような悲劇や苦難を乗り越えて日本民族は生き続け、国を再建していくでしょう」

日本の友人たちよ
あなた方の国民性の素晴らしい点は全て、ある事実を常に意識していることとつながっています。すなわち、人はいつ何時、危機に直面して自己の生き方を見直さざるをえなくなるか分からない、という事実です。(理事長注:深いところで仏教の無常観とつながっています)
それにもかかわらず、日本人が悲観主義に陥らないのは驚くべきことであり、また素晴らしいことです。悲観どころか、日本の芸術には生きることへの喜びと楽観があふれています。日本の芸術は人の本質を見事に描き、力強く、様式においても完璧です。
日本は私にとって大切な国です。日本での仕事や日本への旅で出会い、個人的に知遇を得た多くの人々。……略……

日本の皆さんへ
私はあなたたちに思いをはせています。この悪夢が早く終わって、繰り返されないよう、心から願っています。この至難の時を、力強く、決意をもって乗り越えられんことを。

ワルシャワより アンジェイ・ワイダ


私はこの一ヶ月、いろいろな情景・文を目にして、何回、目と鼻の部分がキューとなったことでしょうか。今も涙を流しながらタイプを打っています。
私の上記「日本人の誇りの源」と、アンジェイ・ワイダさんの文「自然を受け入れてきた民よ」は、本質において同じ内容です。
私達日本人は、自然の移り変わりを感じ、全てのものは移り変わっていくという常なき世界を肌で理解し、いつ何時私達に厳しい試練が襲ってくるかもしれないという客観的事実を、胸が張り裂けられる思いの中でも、冷静に受け入れていくという民族性があ ります。(この根底は、仏教の思想そのものであります)