理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

平成21年3月
理事長 安井俊明
踏 ん 張 れ る 子 ど も の 育 成
――― 安松幼稚園 創立60周年
安井千代 園長在任60年 にあたって ―――

卒園・進級おめでとうございます。
 当平成20年度(2008年度)は、安松幼稚園の創立60周年・安井千代園長在任60年にあたり、この2月11日に、記念式典並びに祝賀会を執り行いました。
来賓の先生方、一期生から今年成人式を迎えたという各年代の卒園生、90歳から現在の保護者にいたるまで、約360名の方に参加頂きました。
安松ファミリーと言える集いでしたが、ホテルのある方も涙され、「参加者全員がお祝いし、ここまで心温かいパーティーは初めてです」と、おっしゃって下さいました。
 市長・新田谷修司氏は祝辞において、安松幼稚園の設立趣意書にある「心身共に健全なる幼児の育成に努め、以て文化日本の建設に九牛の一毛にてもお役に立つべく決心した次第です」を引用され、安松幼稚園がこの60年間、日本文化を次世代へ継承していることの重要さに触れられました。(泉佐野市の公式H.P.ようこそ市長室へ:市長通信:No.361もお読み下さい)
 府議会議員・山下清次氏は祝辞において、安松幼稚園を、「やる時はやる 遊ぶ時は遊ぶ 
というメリハリのある教育方針」
と喝破されました。
 今回の4時間にも及ぶ式典・祝賀会で特筆されるべきことは、年長児101名を、教育活動の一環として参加させたことです。祝賀会でも、園児たちだけで一つのテーブルを囲むように設定しましたので、実を言うと、多少の不安があったのですが、さすがに安松の子ども達です。この4時間ビシッと決めてくれました。参加された多くの方から、「びっくりしました。5歳児の紳士・淑女をみました」「安松っ子の魂を見ました」「式典で園児達がビシッと座って話を聞いている姿を見て、私も来賓の祝辞を聞かずに配られた記念誌を読んだり、隣と話をしてはいけないという気にさせられました」「祝賀会での園児たちの食事風景は、先生が傍にいないのに秩序があり、実に楽しんでいましたね」との多くのお褒めの言葉を頂きました。(いくらこの文を読まれても、実際にあの姿をご覧頂かないと理解できないでしょう。
これこそ上述の「やる時はやる 楽しむ時は楽しむ」の具体化です。
 34期生で、大阪大学医学部を卒業して現在勤務医(頭頸部外科:耳鼻咽喉科)の方が、ある時次の話をしてくれました。
子ども達に治療を施す場合、

3歳児は、まだ単純に痛いと言って泣く

5歳児の多くは、多少痛みや刺激を感じても、これは自分に害を加えようとしているのではなくて、病状を治そうとしてくれていることを理解しかけている。それ故、泣くことはあっても、泣きやもうという気持ちが根底にあり、やむを得ず出てくる涙である。また踏ん張って泣かない子供も結構いる。

しかし中に、5歳児や小学生になっても動物的にヒステリックに泣き続ける子どもがいる。付き添いの母親をみると、日頃子どもに言いたい放題・したい放題させ、子供のご機嫌を取りながら育てているているというのはすぐ判る。言葉かけも、「痛くないのよ。痛くないのよ」と、子どもの機嫌を取る言葉遣いである。「○○であるから、こうしなさい」というような明確な言葉遣いをしない。こういう場合は、母親が傍にいるだけで子供が大泣きを続けるので、了解のうえ、治療室から外に出てもらうこともしばしばある。すると子供の態度が、よい方に変わることが多い。
これなど、子どもの自立を妨げているのは母親(の育て方)そのものであると言える。
どんな世界でも、何らかの負荷をかけずに育つことは、あり得ない。
 この示唆深い話から、「やる時はやる 遊ぶ時は遊ぶ」という精神を言いかえると、
「人間、踏ん張る必要のある時は、踏ん張らなくてはならない」ともなるでしょう。
 先日当園の保護者の方が、「安松幼稚園を厳しいと非難している人を知っているのですが、その人は、雨が降った時に、子どもに傘のさし方を教えずに、小学校まで車で送り迎えをすればいいという考えのようです。」と、話されました。私はこれを聞いて、実に残酷な育て方だなぁと感じました。
 幼児教育や義務教育での第一の目的は、子どもの自立にあります。それ故子ども達には、我慢し辛抱することや、ちょっとした失敗の経験が必要なのです。
当園が常に主張している、「教育とは、子どもの周りから、困難や障害、プレッシャーやストレスを取り除くことではなくて、それらを乗り越えていく力をつけること」は、上述の、4時間の式典を楽しめる子ども、治療を受ける際には踏ん張れる子供、雨が降っても自分で傘をさして通学できる子どもを育てることにつながります。
 園近くの樽谷医院の先生も当園の卒園生ですが、先日ある園児がお世話(二針縫う)になったのですが、あまりにしっかりとしていたので、「安松幼稚園の子供は、一味違うわ」と、お褒めの言葉を頂きました。
 当園と6年間のご縁を結んだある方は、今年の泉の森ホールでの唱歌・童謡コンサートの後、掲示板に「○○ちゃん☆歌を聴きながら客席で涙する人が大勢います。素敵な幼稚園なんだけど、園外の人には『厳しい幼稚園』と噂をたてる人もいるんです。子の完成度だけを噂に聞き、どれだけスパルタなのか・・って。
違うんです、幼稚園の根底に流れる志あっての指導があるから、先生も子どもも生き生きと一生懸命に取り組んでいるだけなんですよね。
子どもたちの目がほんとにキラキラしてるんですよー♪」と記されました。
 間もなく新しい年度となります。安井千代園長の「人としてよいことはよい 間違っていることは間違っている」と60年間発信し続けたことに対して敬意を表しつつ、この稿を終わりたく存じます。
 皆様のご多幸を念じています。