理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

平成26年3月14日
理事長 安井俊明
幼児期に 本気で注意され叱られた
経験のないことほど 大きな不幸はない
―― その前提には 抱きしめ褒めることが必要 ――

春の訪れを感じつつも肌寒さが残る中、本日、卒園・進級の日を迎えました。
卒園・進級おめでとうございます。
 家庭教育であれ学校教育であれ、幼少期(小・中・高を含め)の教育は、子供の自立・自己の確立を目指し、物事を乗り越えていく積極性やたくましさ、並びに周りに対する優しさ両輪を、どのように育んでいくかということにあります。
 安松幼稚園新聞の第66号の川口先生や兎田谷会長の記事の中に、安松幼稚園の子供達の“優しさ”が、千代田・森下先生の記事の中に、“たくましさ・やる気”が、具体的に記されていること、とても嬉しく拝読しました。

 





 3学期に、ある方が「親の言うことを聞かない」「父親に殴りかかる」等々で、子育て相談にお見えになりました。(当園の保護者ではなく、小学生をも含んだ相談です)
以下、私の応え(問答)です。
ご両親は、本気で子供に接していますか? 子供がお父さんに殴りかかってきた時、本気でそして裂帛の気合いで「それはいけないこと」と伝えていますか?
その問いに対し、お父さんは殴りかかってくる子供に対し へらへらとしてるだけ……。お母さんは子供に怒って甘やかしていないとの返事でしたが、ガミガミと小言を言っているだけで、とても私の感じる本気での対応ではありませんでした。
 そこで私は、幼児が話し始める過程を説明しました。
1歳半頃になると、口周り(喉の音声を出す器官)の発達もあり、耳にした単語を即座に物まねして口に出し始めるという時期が来ます。これは、誕生以来、耳から色々な言葉(音)の蓄積が脳にあって出来る事で、1歳半や2歳になって急に出来るというわけではありません。物事の善悪の判断が身に付くのもこれと全く同じで、大きくなったら自然に分かるというものではなく、小さい頃からの積み重ねがあってのことなのです。
  ルソーが「子供を確実に駄目な人間にするには、欲しがるものは何でも与えることだ」と言いましたが、現代において私は「幼児期に、本気で注意され叱られた経験のないことほど、大きな不幸はない」と強く感じます。
幼い頃から、周りの大人が子供に本気で接し、褒め、そして注意もし叱りもするこの両方があってこそ、子供は「これはよいこと、これはだめなこと」という善悪の価値観を身に付けていくのです。

●藤原正彦さんの“日本人の矜持 九人との対話”の中の言葉を紹介しましょう。
「親や教師は、言葉遣いでも、暮らしの中のしつけでも、自分が本当に正しいと思っている価値観を、時に威圧してでも押し付けるほかない。これは、問答無用で構わない。嘘をついたり、小さな者や弱い者に暴力をふるったりしたら、子供をいきなり張り飛ばす。少なくとも六歳か七歳までは、そうやって家庭できちんとしつけなくては、学校教育のみならず、人間としてうまく成長することができない。
 子供のうちは、理屈抜きに大人に従わせる。そして長ずるにしたがって、そこから脱皮し、自分なりの価値観を発見すればいいのです。これはまったく正常な成長過程でしょう。生まれてから十歳ぐらいまでの間に大人に教え込まれた価値観は、長じて自分の価値観を形成するために必要不可欠な踏み台となります。『子供の個性尊重』は、実は子供が本当に自分なりの価値観を作っていくのに必要なものを奪っている。百害あって一利なしです。ところが、文部省も日教組もそして国民も、この『子供中心主義』を圧倒的に支持している。その枠組みで何を改革しようと、教育はよくなりようがありません。」

●もうおひと方、スロバキア出身の的場エヴァさんの“甘い子育てにびっくり なぜ親の役目果たさない”の一部を紹介します。
「来日して22年になりますが、この22年間は日本人の甘い子育てについて驚きの連続でした。私にも二人の男の子がいますが、子育ての中では、日本人のまねをしたいと思ったことは少ししかありません。4,5歳くらいの子供達の遊び方を見ていると、『まぁ、信じられません』の一言。アホ、バカ、ボケ、カス、ドジなどの言葉を当たり前のように使っています。『ママのバカ』と言いながら、親を蹴ったりたたいたりします。こういうとんでもない態度を一回でも許してしまうと、とんでもない結果につながります。
 病院の待合室で、元気のある子供のマナーを見ていると、腹が立ちます。狭い待合室の中で走り回ったり、イスから飛び降りたり、他の患者の足などを踏んだりしているのにかかわらず、親は知らん顔です。どうしてその都度、親がもっと親らしく自分の役割を果たさないのでしょうか。
 今、鳥肌が立つほど少年達の凶悪な事件が起こっていますが、改めて親子関係、親子の信頼、親子のきずなについて、深く考えなければならないと思います。……少し略……時々自分の子供に、愛情のこもった言葉をかけることをお勧めしたいのです。……少し略……親の愛というのは、子供に何でもかまってあげ、何でも許してあげることではありません。一番の基本は、悪いときはその場で注意をし、どうしてそのようなことをしてはいけないかをよく説明し、その代わりによいことをしたときには、子供を抱きしめながらほめることです。」等々。

 お二人の考えを紹介しましたが、幼児期に 本気で注意され叱られた経験のないことほど 大きな不幸はない という言葉を、再度かみしめたく思います。

安松幼稚園の先生達の想い
本気で注意し叱ることは、子供の成長に必要不可欠なものです。しかし叱るだけでなく、ちょっとでもよいところを見つけて、先生が子供と一緒になって喜び本気で褒めることがとても重要なのです。安松幼稚園の先生方は、8回褒めて2回注意するという割合かなぁと感じます。そして厳しく注意した後は、降園までに、必ずよいところを見つけ、抱きしめて褒める。これが大切なのです。
このようにして、子供達は善悪の価値観を身に付けていくのです。

皆さんのご多幸を念じます。



笑顔 笑顔 笑顔

ラストランでは、一緒に走りたいと希望される家族の方も参加されました。
子供達の表情をご覧下さい。
安松幼稚園の子供達は、物事に積極的に挑戦する心が育っています。
それも楽しみながらね

(^o^)