理事長エッセイ

先生の熱意と指導力が安松幼稚園の誇り

平成18年(2006年)3月
安松幼稚園理事長 安井俊明
「漢字」教材の捉え方

 産経新聞十日付談話室「幼稚園で漢字の大切さ実感」並びに二十二日付主張「知にふたをする漢字制限」を拝読し、一幼稚園教諭の立場から一言申し上げたい。
 日頃の園児との触れ合いの中で痛感するのは、「大人が頭で考える難易は、そのまま幼児には通じない」ということである。実際の子供に当たってみると、大人が頭の中で作り上げた虚像はあっという間に覆り、「年齢が高くなるにつれて学ぶことが容易になるわけではない」ことに気付かせられる。
 どんな教材にも、それを扱うにふさわしい時期がある。
漢字とひらがなでは、幼児にとって漢字の方が圧倒的に学びやすい。一字で意味のある漢字、また画数の多い漢字はすっと子供の頭に入る。これに比べ、ひらがな指導はかなりの強制力が必要となる。
 このことは、子供の実態や発達段階を大切にした教育を目指しているものにとって自明であり、当園では創立当時から、名前の記述はすべて漢字である。
 また唱歌・童謡を大切にし、卒園までに約百曲を歌えるようになるが、指導の際には漢字交じりの歌詞を紙に書いて張っておく。園児が字を読めなくてもいいのである。それは、赤ちゃんが言葉の意味を理解できないという理由で赤ちゃんに話しかけるのを止めはしないのと同じである。
 人は生まれて数時間で歩き出す力はないが、周りのものをまねる天才である。誕生から僅か3年で、日常生活に不自由をしないまでに、耳を通して言葉を獲得する。漢字は目で見る言葉だから、耳で聞く言葉と同じように幼児に習得させればよい。幼児から小学校の低学年にかけては、楽しみながら漢字と遊び学ぶ。が、この時期をはずすと、子ども自身、学習が急速に困難になる。
 園生活の中でまた物語の読み聞かせ等で、子供が興味をもつ形で漢字を導入すれば、あっという間に覚える。子供達はごく自然に本を読むのが好きになり、情操豊かになり、想像する力も芽生える。これは相手の人を思いやる心に通じる。
 人間は言語を用いて思考するから、語彙を身につけなければ思考そのものが出来なくなる。語彙の多くの部分は漢字である。
 最後に、国語科における漢字の読み書き同時指導が、日本人から漢字力国語力を低下させ、情操や思考能力を奪っていることを指摘し、文部科学省からの回答を期待したい。